和歌山
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真珠の中心には、砂粒や珊瑚のかけらがあります。不快な異物を飲み込んだ真珠貝は、その痛みを和らげようとしてゆっくりと周囲を分泌液で覆っていき、やがてなめらかで光沢のある真珠を作り上げるのです。
大きな異物を抱え込んでしまった貝は、痛みが消えるまでに時間がかかるので大きな真珠を形成し、あまり気にならない程度の異物を抱えたときは、小さな真珠をつくりだすことになります。
真珠貝が不快な異物を核として美しい真珠を生み出すように、あなたも、今悩んでいる問題を核として、何か価値あるものを創り出すことができるのです。

目 次
○「……しないといけない」と「……したい」 ○濁った水は、そのまま静かにしておくと、いつしか澄んでいる
○不合理な信念と合理的な信念
○うまく眠れないときのために−よりよい眠りのためのヒント
○心の緊張を緩和する「筋リラクゼーション法」
○心のあるがままを観察する「瞑想法」

「……しないといけない」と「……したい」
まず、「私は、……できないなあ」という文章枠を使って、折りに触れてあなたの心に浮かんでくる「できないこと」を探してみてください。たとえば、「私は、整理ができないなあ」とか、「私は、人とうまく付きあうことができないなあ」とか、「私は、最後までやり遂げることができないなあ」といったふうです。
いくつか見つけ出すことができましたか。では次に、中身はそのままにして、文章の枠を「私は、……しないといけない」に置き換えてみてください。すると、「私は、きちんと整理しないといけない」、「私は、人とうまく付きあわないといけない」、「私は、最後までやり遂げないといけない」といったように、なかなかそれがやれないあなたをとがめるような文章ができあがります。
こうした言葉を何回か自分に向かってつぶやいてみると、それは子どもの頃よく親や先生から言い聞かされた言葉だったことに気づいたりしませんか。つまり、こうした自分をとがめるような言葉は、しばしば親や周囲の人の考えを鵜呑みにして、取り込んでしまったものだったりするのです。そうした忠告の多くは、一般的にいえば、役立つものでしょう。でも、あなたは本当にそうしたいと考えているのでしょうか。
そこで次に、その中身を「私は、……したい」という文章枠に入れてみてください。すると今度は、「私は、きちんと整理したい」、「私は、人とうまく付き合いたい」、「私は、最後までやり遂げたい」という文章ができあがります。
この文章を2,3度つぶやいてみると、文章によっては「それは時と場合によるし、そもそも私にとってそれほど重要なことではない」といった思いが浮かんでくることがあります。「整理できているのは良いだろうけど、今のままでも困らない」とか、「人とうまく付き合うといっても、それは相手による」とか、「最後までやらないのは、自分には興味が持てないことだからだ。面白くもないことをやり続けて時間を無駄にするより、さっさと方向転換する方がいい」といった考えが浮かんできたりします。
こういうふうに、「……しないといけない」のなかには、「……したい」へとすんなりつながるものと、つながらないものが混在しています。そして、この「……したい」とはつながらない行動規範こそが私たちを追い立てているものの正体なのですが、じつはそれはだれかの言葉を鵜呑みにしただけのものなのです。
「……できないなあ」とか、「……しないといけない」とあなたの内側でつぶやく声を聞いたら、それを「……したい」に置き換えて、本当にそれがじぶんのしたいことなのかどうか、一度確かめてみてください。

濁った水は
そのまま静かに
しておくと
いつしか澄んでいる |
私たちは誰でも、しじゅう困ったり悩んだりする。そんなときこそ、そこから無理に逃れようとせず、静かに待っているのだ。不安が抑えられなければ不安なままでいい。「これからもっと悪くなる」と考えたっていい。ただ、いま水は濁っていても、いつかは澄んでくる。この真実さえ信じていたら、私たちのいまの生き方が静まる、そして楽にもなるのではないか。

不合理な信念と合理的な信念
「なんくるないさ」というのは沖縄の方言ですが、「なんとかなるさ」といったくらいの意味合いの言葉です。なにか困ったときに、「なんくるないさ」がふと浮かんでくるなら、ずいぶんと気持ちが軽くなると思いませんか。一方、そうしたときに、「どうせ、おれ(私)なんか」といった言葉が浮かぶようなら、まちがいなく落ち込んでしまうことでしょう。
私たちは成長する過程で、あれこれの「思いこみ」を身につけてきます。そうした「思いこみ」のなかには、「なんくるないさ」のように私たちを生きやすくしてくれるようなものもあれば、「どうせうまくいかないだろう」といったように、どうも生きづらくしてしまうようなものもあります。
こうした「思いこみ」を、認知行動療法では「信念」と呼びます。私たちは自分が経験するあれこれの出来事や状況をそのまま受けとめるのでなく、こうした「信念」で色づけして受け取っているのです。言ってみれば、私たちは、自分の「信念」という色眼鏡を通して、自分自身を、そして世の中を見ているのです。
自分を生きづらくさせている「不合理な信念」に気づき、それを現実に即した「合理的な信念」に変えていくことで、自分自身や周りの世界がこれまでとは違ったものに見えてきます。
1.不合理な信念と合理的な信念との見分け方
(1)その信念は、あなたを前向きにしてくれますか?
・できなかったことでなく、やれたことをとらえようとしていますか。
・いやな気分を引きずるようなものになっていませんか。
○前向きな気持ちを生み出さないような信念は、不合理な信念です。
(2)その信念は、事実をふまえたものですか?
・どのようなこと(事実)から、その信念はたんなる思い込みではないということができますか。
・過度の一般化をしていませんか。本当にそれはいつも起こることですか。
○自分に都合のいいことや、自分が気にしていることばかりを拾いだして作り上げた信念は、
不合理な信念です。
(3)その信念には、柔軟性がありますか?
これは一つの考え方であり、他にも違うとらえ方があるということを、あなたは受け入れることが
できますか。
○他の考え方をゆるさないような信念は、不合理な信念です。
2.よくある不合理な信念
(1)「ねばならない」という思いこみ
「約束は守らなければならない」、「人には優しくしなければならない」など、私たちはいろいろな「ねばならない」を持っています。そのすべてが不合理な信念だというのではありませんが、こうした「ねばならない」には、いつでも、どこでも、自分の思うように事を運ぼうとする願望優先の態度が隠されています。
たとえば、「人に好感を持たれる人間でないといけない」という「ねばならない」には、いつでも、どこでも、人に好感を持ってもらえるようでないといけないという完全主義的な願望が隠れています。人の気に入られたいと願うのは誰しもそうですが、世の中には私の嫌いな人がいるように、私のことを気に入らない人もいるはずです。そう考えると、お互い様なのでしょう。
(2)悲観的な思いこみ
「ろくなことがない」、「どうしようもない」、「救いようがない」、「同じことの繰り返しだ」、「絶望的だ」といったような言葉を、しらずしらず口にしていませんか。こうした言葉の背後には、事実をはっきりと見ようとせず、悲観的な思いこみに流されてしまいがちな態度が隠されています。
「何をやろうと無駄だ。どうしようもない」という人に限って、状況を無視した独りよがりの努力を続け、視点を変えてみようとしていないのかもしれません。こうした悲観的な思い込みを修正するには、何がどうなっているか事実をきちんと把握し、時と所が変わっても、その考え方が当てはまるのかどうか自問自答してみることです。
(3)自己卑下と非難の思いこみ
ちょっとしたミスやうまくいかないことがあると、「こんなこともできない、ダメな人間だ」と自分を全否定するようなことをしていませんか。「ダメ」だったのは、あなたのそのときの行動であって、あなたのすべてが「ダメ」なわけではありません。同様に、対人関係がうまくいかないのは、あなたに人間としての魅力がないためではなく、あなたのそのときの行動に不適切な部分があるからでしょう。
これとは逆に、相手を頭から非難することで、自分の責任を回避しようとするような思いこみもあります。たとえば、夫婦喧嘩が絶えないのは相手の性格に問題があるからだ、と決めつけてしまうようなとらえ方がそうですが、このように責任を相手になすりつけてしまうと一見気が楽なように思えますが、よく考えてみると、自分の力では夫婦の間の関係をどうにもできないということになり、結局は無力感を感じることになるのです。
自分や相手を全否定してしまうのでなく、具体的にどのような行動が問題となっているのか、どうすればそれを改善できるか考えてみましょう。
(4)「耐えられない」という思いこみ
「夫の態度には我慢できない」、「今の会社は耐えられない」というように、「耐えられない」という思いこみにとらわれているとき、「自分には耐えられないということが、なぜ分かるのだろうか?」、「今まで耐えてきたのに、これ以上は耐えられないと思うのは、どういうことからだろうか?」と自分に問いかけてみてください。「耐えられない」という判断は事実に基づくものなのでしょうか。それとも、気分に流された思いこみなのでしょうか。
こうした視点から捉えなおしてみると、ときには、耐えられないという思いこみを支えているもう一つ別の思いこみ、たとえば、「自分には状況を変えるだけの力なんかない」といった思いこみに気づいたりすることもあります。

うまく眠れないときのために − よりよい眠りのためのヒント
眠ろうとすればするほど眠れなくなり、布団のなかで転々とするというのは、だれしも経験したことがあるのではないでしょうか。以下にうまく眠るためのヒントを書いていますが、まずは、何とか眠ろうと努力する前に、「眠れなくてもいいではないか。こうしてゆっくりと横たわっていれば、体は休息を取れる」と考えて、眠ろうとすることを止めるということをためしてみてください。
布団のなかでのそうした時間を、リラクゼーションの練習のために使うこともできますし、なんなら起き出して本を読んでみたり、音楽を聴いてみるのもいいでしょう。要は、眠ることにとらわれないことです。
1.適切な睡眠時間は人によって違います。日中、特に眠気で困るようなことがなければ、十分睡眠がとれていると考えましょう。
2.就寝時刻にはあまりこだわらないで、眠くなってから床につくようにしてください。寝る前に、軽い読書、音楽、ぬるめの風呂、心地よい香り、筋弛緩法などでリラックスすることを習慣にするのもよいでしょう。
3.お腹がすきすぎて眠れそうにないときには、軽い夜食をとるのもいいでしょう。でも、夜遅くに水分をとりすぎると、夜中に尿意を感じて目覚めてしまうので、ひかえめにしましょう。床につく前4時間はカフェイン摂取を避け、1時間は喫煙を避けてください。
4.床に入っても寝付けないようなときは、むりに眠ろうとするのでなく、「身体を休息させればいいのだ。そうすれば、明日はいつもの時間に起きても大丈夫だ」と考えて、身体がリラックスした感じに注意を向けるようにしてください。
5.気になることや不安な思いが浮かんできて、どうしても寝付けないようなときは、一度起き上がって、それを簡単に書き出してみてください。次回のカウンセリングのときに、それらのことを話し合うことができます。
6.毎日、なるべく同じ時刻に起きるようにしてください。早く起きるようにすれば、自然に早く眠れるようになるものです。
7.朝、目が覚めたら日光を取り入れて、体内時計のスイッチを入れてください。逆に、夜の照明は、明るくなりすぎないようにしましょう。
8.昼寝は、午後3時までの短時間(20分〜30分)に限ってください。
9.眠りが浅いときには、「遅寝・早起き」が役に立ちます。また、規則的な運動は眠りを深くしてくれます。
10.睡眠薬は医師の指示を受けながら正しく服用すれば役に立つものです。睡眠薬がわりにアルコールを飲むと、かえって眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすくなります。また、薬とアルコールとの併用はぜったいに避けてください。
11.睡眠中のイビキがひどいとき、一時的に呼吸が止まるとき、脚がぴくつくときには病気が隠れていることがあるので、専門医に相談してください。また、十分に眠ったのに日中眠気が強いという場合も、専門医に相談してください。そのようなときには、車の運転を避けてください。

心の緊張を緩和する「筋リラクゼーション法」
不安なとき、落ち着かない心を静めようとしても、なかなかうまくいきません。そして、そうしたときは心が動揺するだけでなく、体にもどこかしら力が入り緊張しています。こうした心と体の結びつきを利用して、体の緊張をゆるめることで心の緊張もほぐしていこうとするのが筋リラクゼーション法です。もともとはアメリカのジェイコブソンが考案した漸進的筋弛緩法というものですが、正式な方法はずいぶん手間がかかるのでここでは簡略な方法を紹介します。
まずは、背もたれのある椅子にゆったりと腰掛けてください。手は、肘掛けに乗せるか、太ももの上に置いてください。そして、軽く目を閉じて、自分のペースで楽に呼吸をしてください。
次に、そのまま自分の体の感覚に注意を向けてみてください。椅子と触れているお尻や背中に感じる圧力、足の裏が床に触れている感触などを確かめてみてください。
次に、腕はそのままの位置にして、右手をギュッと握りしめます。力一杯握りしめる必要はありません。7、8分の力かげんでかまいません。またこのとき、上腕部や肩にはできるだけ力を入れないようにしてください。そのまま、力が入っているときの感覚を感じながら10まで数をかぞえ、そのあと右手からスッとと力を抜きます。そして、こんどは力が抜けたときの右手の感覚をゆっくりと感じ取り、確かめてください。
次に、同じことを、左手で行ってください。
次は、右腕全体に力を入れ、緊張した感じを感じ取り、その後スッと力を抜いて、力が抜けたときの感覚をしばらく味わってください。そして、今度は左腕で、同じことをやってください。
なれてきたら、両手、両腕を一緒にやってもかまいません。
ここから先は、力を入れて脱力する部位を、両肩、両脚、お尻、背中、腹部と胸部、顔と移していき、最後に全身に軽く力を入れ脱力し、しばらく力が抜けた感覚を味わいます。
体の各部位の力が抜けたときの感覚がつかめるようになるまでは、一連のシリーズとして、1日2回くらい練習するほうがいいでしょう。少し練習を続けていると、緊張したときに体のどこに力が入りやすいかということに気がつくものです。そうなってきたら、その部位の脱力感を集中的に練習することをおすすめします。

心のあるがままを観察する「瞑想法」
○事前の練習 腹式呼吸の練習
瞑想中は、腹式呼吸をします。この呼吸法に不慣れな方は、事前に腹式呼吸の練習をしておきましょう。
まず、背筋を伸ばして座るか、仰向けに横になってください。そして、そのままお腹をへこませて息を吐いてください。吐き終えたら、今度はお腹を膨らませながら息を吸い込みます。そしてまた、お腹をへこませながら息を吐いていくということを続けます。このとき、特に深く呼吸をする必要はありません。ゆっくりと、楽に呼吸ができればいいのです。分かりにくいようなら、片方の手を下腹に置き、そこが膨らんだりへこんだりするのを確かめながらやるのも良いでしょう。座った状態でもかまいませんが、横になった方が、最初は分かりやすいでしょう。腹式呼吸の感覚がつかめたら、瞑想の練習に移ります。
○姿勢
椅子に腰掛けるのでも、床に座るのでもかまいません。ただ、どちらの場合も、背筋をまっすぐに伸ばして、肩の力を抜き、両手はモモにのせます。椅子に座る場合は、脚を組まずに、両方の足の裏を床につけるようにしてください。床に座る場合は、お尻の下座布団を当ててあぐらをかき、両膝は床につけるようにすると、姿勢が安定します。正座は避けてください。
○目を閉じて体の感覚に注意を向ける
次に、静かに目を閉じて、体を前後左右に少し動かし、重心が安定する位置を見つけてください。そのまま、腹式呼吸を続けながら、体の感覚に注意を向けます。床や椅子と触れている部分の感覚、体全体の感覚などに、1,2分注意を向けます。
○一息一息に注意を向ける
次に、息が出入りするときの下腹部の感覚の変化に注意を向けます。息が入ってくるときの腹壁のふくらみ、出て行くときの収縮の感覚に注意を向けます。意識的に呼吸を操作するのでなく、体が自然に呼吸をしている様子を細かく観察するようなつもりで、一息一息に注意を向けてください。
○あれこれの思いが浮かんできたら、繰り返し静かに呼吸に注意を戻していく
このようにして呼吸に注意を向けていても、すぐにあれこれの思いが頭をよぎり始めます。普段気になっていることであったり、これから先の予定であったり、心はあちこちにさまよい始めます。でも、こうして心がさまようこと自体には、何も問題はありません。心とは本来そういうものなのです。
静かに座っていようとしても、「自分は正しく瞑想ができているのだろうか」とか、「こんなことが、何かの役に立つのだろうか」とか、「本当に心は落ち着くのだろうか」といった疑問や疑いがわき起こってきたりします。
そうしたことに気づいたら、無理にそれを心から追い払おうとするのでなく、そのまま静かに注意を呼吸へと戻していきます。繰り返し起こるこうした心のさまよいに、穏やかに注意を向け、そしてそのつど呼吸へと注意を戻していきます。
○最初は5分間くらい、慣れてきたら15分間くらいの瞑想を日課として続ける
心をよぎるあれこれの思いはそのままにして、無理なく注意を呼吸に戻していくという練習を重ねることで、次第に、そのときそのときの自分の体験に気づくようになり、呼吸への注意ということを手がかりとして、そこでの心のざわつきから上手に距離を取ることができるようになります。しかし、不安なときに思い立って瞑想をしたからといって、心が落ち着くものではありません。まずは、早急な効果を求めるのでなく、とにかく日課として瞑想を続けてみてください。瞑想の時間は、いわば、自分を調整して自然な状態に戻すための時間であり、自分を大切にする時間なのです。そして時には、40分から1時間くらいの時間をかけて、ゆっくりと心の動きと付き合い、そのつど注意を呼吸に戻していくことに挑戦してみてください。
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