和歌山
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「うつ」を理解しよう

何かのストレスを感じるとき、私たちは、「頑張ってストレスに打ち勝とう」とします。でも、いくら頑張っても、すぐにはどうにもならないこともあります。長期にわたってストレスにさらされ、それが過重な負担となってくると、もうこれ以上の無理を止めてしまうような動きが起こってきます。簡単に言えば、これが「うつ」の状態だと言っていいでしょう。つまり、「うつ」とは、一定のところで頑張ることをやめ、過重な負担から逃れようとする自然な反応なのです。
こうした「うつ」は、けっしてめずらし状態ではありません。これまでの調査によれば、15人から7人に1人が生涯のどこかで「うつ」を経験しているという結果が出ています。
うつ状態になると、悲観的な考え方が強くなり、何をやるのもおっくうで先のばしにしてしまうというようなことが起こってきます。そして、こうした「うつの思考」や「うつの行動」が抑うつ気分をさらに強めてしまうことになるという悪循環が生まれるのです。
当センターでは、うつのカウンセリングとして認知行動療法を行っています。具体的な進め方はそれぞれの方が抱えておられる問題によって異なってきますが、基本的には、無理のないところから日常の活動量を増やしていくことで「うつの行動」の改善をめざすことと、あれこれの状況で頭に浮かんでくる否定的な考えをとらえ、それを修正していくことで「うつの思考」から抜け出す方法を身につけていく、ということで成り立っています。
また、うつ病の困った問題のひとつは、再発の可能性が高いということですが、認知行動療法によって考え方や行動のパターンを変えていくことでうつの再発率が抑えられることが知られています。
1.「うつ」の症状

「うつ」というと、気分がしずんで意欲がわかないという症状を思い浮かべますが、「うつ」になるとそうした気分や意欲の変化だけでなく、考え方、行動、身体の各領域にも変化がみられます。
● 気分の変化
抑うつ気分:気持ちが落ち込み、何もかもむなしく思える
悲哀感:これといった理由もないのにつらい、悲しい
● 考え方の変化
思考力や集中力の減退:頭の回転が鈍ってきた、集中力に欠ける、仕事の能率が下がった
決断困難:何も決めることができない、どうしたらいいのかわからない
悲観的な考え方と自責感:些細なことにこだわりくよくよ考え込んでしまう、将来を悲観的に考える
自殺念慮・自殺企図:死んでしまった方が楽だという思いにとらわれる、自殺の方法を考える、
実際に自殺しようとする
● 行動の変化
不安焦燥感:気持ちが落ち着かずじっと座っていられない、イライラして怒りっぽくなった
意欲や活動性の低下:何をしても面白くないし、何かをしようという気持ちすら起きてこない、
動きがおそい、口数が少なくなった、笑えなくなった
全身倦怠感:身体が重くて力が出てこない、ちょっと動いただけですぐ疲れてしまう
● 身体の変化
睡眠障害:寝つきにくい、眠りが浅い、朝早く嫌な気分で目覚めてしまう、日中も寝てばかりいる
食欲や性欲の減退:何を食べてもおいしいと思えない、体重のいちじるしい減少や増加、
性的な関心や欲求が起きてこない
身体症状(頭痛、頭重、肩こり、動悸、胃の不快感、頻尿、など)へのとらわれ
こうした症状がつづくと人間関係や仕事にも支障が出てくるようになり、それがまた負担になって症状が重くなるという悪循環になってしまいます。
2.「うつ」の原因

ではこうした「うつ」はなぜ起こってくるのでしょう。まだはっきりとした原因は分かっていませんが、下にあげたようないくつかの要因が重なり合って起こってくると考えられています。
(1)生物学的な要因
「うつ」になると、脳内の神経伝達物質(モノアミン)が減少することが明らかになっています。しかし、なぜこういう状態になるのかということは、まだ解明されていません。
抗うつ薬と呼ばれる「うつ」に用いられる薬は、こうした神経伝達物質のバランスを回復する作用があります。
(2)心理的な要因
@外からのストレス
心理的な要因としてまずあげられるのが、外からのストレスです。過重な仕事や人間関係のもつれといった持続的なストレスや、死別、病気、職場での移動、転居といった急激な環境の変化がストレスとなり、「うつ」に陥ることがあります。また、ストレスとなるのは不快なことだけでなく、たとえば結婚や昇進といった一般的に言えば好ましい変化であっても本人には過重な負担となることがあります。
A性格要因
次にあげられるのが、性格的な要因です。同じようなストレスを受けても「うつ」になる人とならない人がいることからも、性格が関係していることがわかります。「うつ」になりやすい性格傾向としては、几帳面で責任感や正義感が強く、きまじめなのだが、その一方で、融通がきかず、うまく手を抜くことができず、自分一人で責任を抱え込んでしまいがちな傾向などがあげられます。
このように原因はよくわかっていないのですが、「うつ」の治療法としては、抗うつ薬を飲むことで脳内の神経伝達物質のバランスを整えていくことと、カウンセリングによって「うつ」の人に特徴的な考え方のパターンを変えていくのが有効である、ということが科学的に明らかにされています。
3.「うつ」を維持させているもの − 「うつの悪循環」

(1)うつ思考(悲観的な考え方)
「うつ」の人には、「うつ」におちいる前から、自己批判(過度に自分を責める)、否定的思考(何かにつけて悪い側面を取り出して考える)、絶望(将来について悲観的な考えにとらわれる)という3つの思考パターンがみられます。
(2)うつの悪循環
いったん「うつ」に陥ると、物事を悲観的にとらえてしまう傾向(うつ思考)が出てきて、同時に、活動量が低下し、いろんなことをぐずぐずと先延ばしにしてしまう(うつ行動)ようになります。そして、こうした考え方や行動がさらに「うつ気分」を悪化させるという悪循環が起こり、「うつ」の症状を定着させ、強めていくことになります。

上の図のように、「うつ」になると、気分と考え方や行動との間にうつの悪循環が形成され、「うつ」がさらに「うつ」を悪化させるということになってしまいます。ですから、こうしたうつ思考やうつ行動を修正し「うつの悪循環を断ち切る」ことで、うつ気分から抜け出すこともできるのです。
4.「うつ」から抜け出す方法

(1)ストレスを軽減する
まずは、いま自分がつらい状態であることを、誰かに伝えることを考えてください。そして、可能な範囲でかまいませんから、負担に感じることを取り除くようにしてください。周りに迷惑をかけることを心苦しく思うかもしれませんが、「本来なら、こうすべきだ」という考えはひとまず横に置いて、少し休息を取ることを優先してください。
(2)薬を飲んでみる
薬を飲むことで、「うつ」の症状が改善されます。あなたの症状にあった薬を見つけるためにも、専門のお医者さん(精神科や心療内科のお医者さん)に診てもらいましょう。
脳の中には無数の神経細胞があり、それらはシナプスと呼ばれる組織でつながっています。神経細胞はシナプスを介して情報の伝達を行いますが、そこでの伝達のしやすさを調整している物質のひとつがモノアミンです。「うつ」になると、このモノアミンが欠乏してきます。
抗うつ薬を服用することで、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることができます。しかし、抗うつ薬は飲んですぐ効くというものではなく、安定した効果を得るには1ヶ月くらいはかかります。お医者さんと相談しながら、指示通りに服薬することが大切です。
また、薬を飲むとちょっとした副作用(眠気、喉の渇き、ろれつが回りにくいなど)が出てくることがありますが、多くはしばらくすると軽くなってきます。こうした副作用については、お医者さんとよく話し合ってください。
まだ専門のお医者さんにかかっておられない方は、薬を飲むことが必要なのかどうか、カウンセリングのなかで相談することもできます。
(3)うつ行動を変えていく:生活リズムを整え、活動量を増やしていく
次に、睡眠、食事、運動といったことに配慮しながら、いったんくずれた生活リズムを、ふたたび整えていくようにしましょう。動くのがおっくうだからといって寝てばかりいては、かえってうつ気分が強まってしまいます。ちょっと散歩に出てみる、少し家事をしてみる、風呂に入るといった軽い運動は良い気分転換になります。
こうした活動が大事だとわかっていても、ついおっくうになってさぼってしまうようなこともあるでしょう。それでもかまいません。きちんとやり遂げる必要はありません。少しさぼってしまっても、できることから、また取りかかればいいのです。大切なのは、気分に流されることなく、やれる範囲のことをちょっとやってみるということです。
こういうふうに少しずつ活動量を増やしていくことが、うつ行動を改善することになり、うつの悪循環を断ち切ることにつながっていきます。当センターでのカウンセリングも、自分の行動をチェックし、喜びや達成感を感じられる行動を少しずつ増やしていくこと(セルフ・モニタリング)からスタートします。
また、「うつ」になるとしばしば睡眠障害を伴いますが、眠れないからといってお酒を飲むのは、あまりおすすめできません。そのときは寝付けても、夜中に酔いが覚めて目覚めてしまうので、かえって睡眠を乱してしまうことになります。「セルフヘルプ・ヒント集」のページに載せてある「うまく眠れないときのために−よりよい眠りのためのヒント」を参考にして、規則正しい睡眠をとるように心がけてください。
(4)うつ思考を変えていく:自分の考え方のかたよりに気づき、修正していく
「うつ」から抜け出すためにもっとも大切なのが、自分のうつ思考(つまり、自己批判、否定的思考、絶望)に気づき、それを修正していくことです。「うつ」のカウンセリングでは、この作業が中心になりますので、もう少し詳しく説明します。
●自己批判:「自分はダメだ」という受け止め方
「うつ」のために毎日の生活や仕事に支障が出てくると、「こんなこともできないなんて、なさけない」、「私がまともな人間だったなら、こんなことで悩まないだろう」、「みんなに迷惑ばかりかけて、申し訳ない」、「私は親としても人間としても失格だ」といったように、自分を責めてしまう気持ちが強くなってきます。
こうした考え方の根っこにあるのは、「自分は無価値だ」、「自分は役立たずだ」という思いこみです。「うつ」におちいる人には、しばしばこうした自己批判的な考えを抱きやすいところがみられます。
●否定的思考:「悪いことばかりだ」という受け止め方
「うつ」になると、あれこれの経験をすべて悪く解釈してしまったり、周りの人たちが自分に批判的に接しているように受け止めてしまうことが多くなります。
たとえば、ちょっとした仕事上のミスを、取り返しのつかない失敗をしてしまったと考えたり、家族から「ゆっくりしてればいい」と言ってもらっても、「本当はあきれてしまっているのだろう」と考えたりします。周りの人が示してくれた好意より、無理解な言葉ばかりに目が向いて、イライラしてしまうのです。
こうした受け止め方が起こってくるのは、うれしかったことや普通のことよりも悪いことの方に注意が向き、そのことばかりが記憶に残ってしまうためです。
●絶望:「将来は真っ暗だ」という受け止め方
過去のことをグズグズと悔やんだり、今の自分を情けなく思ったりすることに加えて、「うつ」になるとすべてのことがこの先ますます悪くなっていくだろうという悲観的な思いこみが強くなってきます。そして、「これからもつらいことばかり起こるだろう」、「だれも自分を好きになってくれないだろう」、「何をやったところで、うまくいかないだろう」といった将来に対する否定的な考えから、強い絶望感にとらわれてしまうことになります。
また、全体的には「うつ」から回復してきているのに、ちょっと落ち込むようなことがあると(そして、こうした「悪化」はうつの回復過程ではしばしば起こるのですが)、「やはり、自分のうつは治ってないのだ」、「この先も、決してよくなることはない」といった根拠のない決めつけをしてしまいやすいのです。そして、極端な場合には、「死んでしまえばこの苦しみから逃れられる」と、自殺を考えるようなことになってしまうことすらあります。

こうした「うつ思考」を修正し、「うつの悪循環」から抜け出すためのカウンセリングとして有効なのが「認知行動療法」です。「認知行動療法」とは、「うつ行動を変える」ことと、「うつ思考を変える」ことで、うつや不安から抜け出す援助をしようとするものです。このうち、「うつ行動を変える」ことについては、簡単ですがすでに触れてありますので、ここでは「うつ思考を変える」ことについてもう少し説明しておきます。
認知行動療法でいう「認知」とは、あなたの考え方や物事の受け止め方のことです。そして、私たちの感情や行動を左右するのは、そこで起こっていること自体ではなく、それをどのように受け止めたかということ、つまりそこで起こっていることに対する「認知」なのだから、その「認知」を修正することで感情や行動を変えていこうとするのが認知行動療法なのです。
たとえば、朝、目を覚ましたときに、「今日もまたいやなことばかり起きるのだろう。布団から這い出たところでどんな意味があるのだ」と考えてしまうのでは、当然、気分も落ち込んでしまいます。人と接する場面で不安になったり劣等感を感じたりするのは、「自分は、まともに仕事もできない」とか、「私は気の利いた話なんかできない。私の話なんて、だれも面白いと思わないにちがいない」と自分に向かって言っているからかもしれません。
あれこれの場面で、なかば自動的に浮かんでくるこうした「認知」に気づき、そのかたよりを修正していくことで、習慣的になった「うつ思考」から抜け出ていくことができるのです。
和歌山カウンセリングセンターでは、うつのカウンセリングとして「認知行動療法」を行っています。
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